Our
Precious
Princess
第 二 章 h 嘆
き の 章
第
一 話 別 れ
と は じ ま り
―――――何も思い出せない
でもわたしの瞳に映るワタシはいつものように笑ってるの
隣には、大好きなあなたがいて
いつものように
ここが わたしの場所
なのに
どこかで声が聞こえる…
目を覚ましちゃいけないよ
そこから本当の夢が始まってしまうから
君
を 快楽
の 渦
に 突き落とす 悪
夢 が…
――ねえ
わたしの隣にいるのはあなただよね?
ねえ、どうして?
あなた の 顔 が 思い 出 せ な い …
「―…ぅ…」
ああ、朝だ。
…何だか身体中がイタイ…
そっか、昨日の体育で頑張りすぎたんだった。
でも頑張って裕太に良いところ見せたくて。
あ、今日は裕太と遊びに行くんだ。
裕太のお家に行くのは2ヶ月ぶりかぁ…
もう起きなきゃ…
でも… 瞼が重いよ…
「……ちゃん?」
聞き慣れない声が耳に入ってくる。
…あれ、誰だろう…
どうしてわたしの部屋にいるの…?
『君が欲しい』
知ってる。
わたしは知っている。
甘くて
艶めいた
堕
天 使
の 囁
き
ヲ
「…そろそろ起きないと… 日が暮れちゃうよ…?」
「…」
瞼を開けたわたしの瞳に映ったのは、カーテンからこぼれ落ちる朝日の眩しさじゃなくて。
「…起きた…ね」
細い指がそっとわたしの髪をすくう。
ゆっくりとその顔に焦点を合わせていく。
色素のうすい少し長めの髪が肩に掛かってる。
違う
違う、彼は…
『ボ ク ガ ホ シ イ ?』
『 助 け
て――――――――』
「―…ぁ…や…いやぁぁぁぁッ―」
全部が、わたしの感覚のすべてが、思い出す。
忌まわしい残像が頭の中を掻き回す。
わたし、裕太以外の人と…
裕太の…お兄さんと…ッ
やめて
消えて…
「み…みない…でっ…」
手当たり次第にシーツを剥ぎ取って、躯に巻き付ける。
乱暴に投げすられたはずの衣類は綺麗にベッドの下に置かれていた。
とにかく早く、この部屋から立ち去りたい…
それを掴んでわたしは何も言わず、目も合わさずに彼の横をすり抜けようとした。
「…」
「…やぁッ!!」
掴まれた腕を振り払おうとしたのに、
落ちそうになったシーツごと抱きしめられた。
「…」
彼は何も言わなかった。
「イタイ… 放してっ…」
彼の腕の力がそっと抜けていくのがわかった。
彼は一度もわたしと目を合わすことなく、静かに部屋を出て行った。